昔話には動物が良く出てきますが、日本では狸の話が多いでしょうか。
筆者の学校の裏山にも狸が住んでいてテニスボールや上靴をため込んだ巣を発見したことがあります。
それだけ人間の暮らしに接して生きている狸だからこそ物語になりやすかったんですね。
韓国語で 虎、寅(とら)と韓国の昔話
韓国ではトラ
一方お隣の韓国では何の動物が多く出てくるでしょうか。それはトラなんです。
今は中国と北朝鮮の国境にある백두산(ペットゥサン/百頭山)にしか生息していないようですが、昔は朝鮮半島の南にもよく現れて悪さをしたといいます。
頭を悩ます動物ではあったけれど、やはり獣の王様なのでお話の主役に抜擢されたんでしょうね。
トラと干し柿のお話
各国それぞれ옛이야기(イェッイヤギ/昔話)といえば数多くの話がありますが、今回は韓国の호랑이와 곶감(ホランイワ コッカン)というお話です。
호랑이はトラ、곶감は干し柿です。どういった話でしょうか。
昔、ある1匹のトラがお腹を空かせて民家に降りてきました。
すると民家から子供の泣き声がします。
お母さんが「泣くのはお止め。外にトラがいてお前を食べちゃうよ。」とおどしますが、子供は泣き止みません。
「泣き続けるなら外に放り出してお前を食べてもらうよ。」と続けますが子供は泣き止みません。で、トラは今か今かと民家の前で待っています。
それでも泣き止まない子供にお母さんは、「えい、干し柿だ。」と言って干し柿を与えます。するとぴったり泣き止んだ子供。
民家の外から聞いていたトラは、自分を怖がりもしなかった子供が干し柿という名前だけで泣き止んだ。
それほど干し柿というものは怖い存在だ、と勘違いをするのです。
ここでボヤボヤしていては、その怖い干し柿に俺も食べられてしまうと急いで牛舎に逃げ込みます。
すると牛舎に潜んでいた牛泥棒がトラの上に落ちてきます。
自分の背中に乗った牛泥棒を干し柿だと思い込んだトラはすごいスピードで走り回りますが、牛泥棒もここで振り落とされたらトラに食べられてしまうと必死にしがみつきます。
さすが子供が怖がるだけの干し柿だ。こんなに走り回っても全く転げ落ちないなんて、と一層怖がるトラ。
最後には泥棒が牛の背中から木の枝に飛び移り、トラもようやく逃げることが出来ました。
というお話です。
似たような昔話は日本にもありますね。韓国でも干し柿は名産品で柿のデザートは豊富です。홍시(ホンシ)といって、熟した柿も好んで食べたりしますよね。
また、干し柿の名産地である慶尚北道の尚州市(경상북도 상주시)では12月に干し柿祭りが開かれます。
干し柿を使った様々料理の実演、試食、干し柿アイスクリーム、トラと干し柿のお話の演劇などといった催しものも体験することが出来ます。
韓国語での会話
A: 호랑이가 오면 쥐 죽은 듯이 숨어 있어.
A: トラが来たら息を殺してじっと隠れているんだぞ。
B: 혹시 기절하면?
B: もし気絶したら?
A: 정신 차려라…기절하면 호랑이의 밥이 된다. 호랑이한테 잡혀가도 정신만 차리면 산다!라는 말도 있잖아.
A: 気を確かにしてろ。気絶したらトラの餌食だ。とらに捕らわれても気だけしっかりもっていれば生きることができる。という言葉もある。
B: 그래. 해볼게..
B: そうか。やってみる。
쥐 죽은 듯이 直訳するとネズミが死んだように。意味は「しんと静まりかえって」、「息を殺してじっと」です。例文としては、쥐 죽은 듯이 조용한 거리ひっそりと静まりかえった街。
정신 차리다は失っていた意識を取り戻すという意味です。ぼーっとしていて失敗の多い人にも정신 차려라!!と喝を入れます。
호랑이한테 물려가도 정신만 차리면 산다というのは韓国のことわざです。
どんなに悪いこと、例えば危険なことや怖いことが起きても冷静でいればどうにか窮地から脱することができるという意味でよく使われます。
昔話で韓国語勉強
いかがでしたか。昔話は子供用にかかれている物も多いので一度検索してみると韓国語の学習にもなり面白いかもしれません。
インターネットを利用すると絵本の絵を見ながら韓国語で朗読してくれるものもあります。言葉も文化も知ることができて일석이조「一石二鳥」ですよ。