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韓国にも日本と同じで、その地方ならではの方言があります。ちょっとしたイントネーションはもちろん、同じ意味でも全く違う言葉だったりするところは、日本語も韓国語もとても面白いと思います。
今回はそんな韓国語の方言について深堀してみましょう。
韓国にも方言ってあるの?地域ごとの韓国の方言の魅力を知ろう
まずは韓国の地理を知ろう!
方言を知る前に、少し韓国の地理的な事を知っておきましょう。韓国の地理を把握することは、韓国への理解も深まり、韓国語の上級者への第一歩でもありますから、しっかりおさえておきましょう。
日本でも地域を表す表現は幾つかありますね。都道府県や「北海道」「東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「四国」「九州」といった○○地方といった表し方だとか。
さて、韓国はどうでしょうか?韓国にももちろんそのような表現があります。
皆さんよく耳にされる「서울 (ソウル)」「부산 (プサン)」、こちらは都市の名前ですね。先ほど日本の事をお話しましたが、「関東地方」「関西地方」のように分けて呼ぶ呼び方はあるのでしょうか。
もちろんありますよ。大きく分けて5つに分かれています。
- 京畿地方 경기지방(キョンギジバン)
- 關東地方 관동지방(クァンドンジバン)
- 湖西地方 호서지방(ホソジバン)
- 湖南地方 호남지방(ホナムジバン)
- 嶺南地方 영남지방(ヨンナムジバン)
これらの呼び方は天気予報でよく使われています。リスニングの練習にもなりますので、天気予報の動画を観ながら聞き取りをして、韓国のどの位置なのか確認してみるもの良いですね。
天気予報では上の表現をよく使いますが、これ以外にも8つの道に地域を分けて呼ぶ呼び方もあります。
8つの道なので「八道 팔도 (パルド)」と呼びます。韓国人が自己紹介などで自分の出身を言う時は、先ほど紹介した5つの分け方よりもこちらの方を使うことが多いですね。
この「팔도」ですが、李氏朝鮮(朝鮮王朝)が朝鮮半島に置いた8つの道(行政区画)が基になっている「朝鮮八道 조선 팔도 (チョソンパルド)」で、朝鮮半島を8つに分けたものをいいます。
- 京畿道(キョンギド)
現在の韓国の京畿道・ソウル特別市・仁川広域市の大部分・及び朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の開城特別市を合わせた地域。
- 忠清道(チュンチョンド)
湖西地方 호서지방(ホソジバン)大田広域市・世宗特別自治市等があります。
- 慶尚道(キョンサンド)
嶺南地方 영남지방(ヨンナムジバン)大邱広域市、釜山広域市と蔚山広域市等があります。
- 全羅道(チョルラド)
호남지방(ホナムジバン)光州広域市等があります。
- 江原道(カンウォンド)
관동지방(クァンドンジバン)現在の韓国の江原特別自治道と朝鮮民主主義人民共和国の江原道、そして韓国の慶尚北道の蔚珍郡を合わせた地域。
- 平安道(ピョンアンド)
現在は朝鮮民主主義人民共和国。평안도(ピョンアンド)の中心は平壌。
- 黄海道(ファンヘド)
現在は朝鮮民主主義人民共和国。白翎島、延坪島などは現在韓国政府が実効支配しており、仁川広域市に属しています。
- 咸鏡道(ハムギョンド)
現在は朝鮮民主主義人民共和国。1896年に咸鏡北道と咸鏡南道に分割されました。
朝鮮戦争によって「平安道」「黄海道」「咸鏡道」は北朝鮮となりました。ちなみに朝鮮八道は現在の韓国でいう「팔도」とは少し異なります。
現在の韓国でいう「팔도」とは、京畿道・江原道・忠清北道・忠清南道・全羅北道・全羅南道・慶尚北道・慶尚南道・済州道のことです。(1946年には済州島が全羅南道から分離されて済州道が創設されました)
済州道が全羅南道から分離されたので、現在では9つの道なのですが「팔도」と呼んでいます。
- 京畿道 경기도(キョンギド)
- 江原道 강원도(カンウォンド)
- 忠清北道 충청북도(チュンチョンブクド)
- 忠清南道 충청남도(チュンチョンナムド)
- 慶尚北道 경상북도(キョンサンブクド)
- 慶尚南道 경상남도(キョンサンナムド)
- 全羅北道 전라북도(チョルラブクド)
- 全羅南道 전라남도(チョルラナムド)
- 済州道 제주도(チェジュド)
このような地方の区分や地理的位置を知っていると、方言の特徴なども理解がしやすいので、覚えておくと良いですね。
日本語の名残が多い方言?!
タイトルからピンと来た方もいるでしょう。地理的にも日本に近い「慶尚道 경상도 (キョンサンド)사투리 (サトゥリ」は日本語の名残がとても多く、イントネーションだけでなく言葉自体をそのまま普通に使っているほどです。
日本人で韓国語が話せる人の多くは、この「경상도 사투리」のようなイントネーションになっているほど、親和性があるのがこの「경상도 사투리」。日本語の単語が多く使われていたりするのも面白いところです。
たとえば、爪切りを標準語では『손톱깍기 (ソントプカッキ)』といいますが、경상도では『쓰메끼리 (スメキリ)』という人がとても多いんですよ。
※韓国語には「つ」と発音する文字が無く、日本語の「つ」は「쓰」と表現されます。
その他にも以下のような言葉が使われています。
- 弁当:도시락 / 벤또
- おかず:반찬 / 쓰끼다시
- 玉ねぎ:양파 / 다마네기
- 爪楊枝:이쑤시개 / 요지
- ズボン:바지 / 즈봉
- たらい:대야 / 다라이
※日本語:標準語/慶尚道の方言の順に記載
標準語にも日本語の名残が少し残っていますが、경상도では他の地方よりも多く残っています。こういう日本語の名残をさがしてみるのも面白いですね。
挨拶に現れる韓国語の方言の違い
皆さんも良く知っている韓国語の挨拶「안녕하세요」は、方言によって違いがあるのでしょうか。地方によってこの「안녕하세요」がどう変化するのか見てみましょう。
- 標準語 안녕하세요(アンニョンハセヨ)
- 京畿道 안녕하시까?(アンニョンハシカ)
- 江原道 안녕하셨드래요(アンニョンハショッドゥレヨ)
- 忠清道 안녕하세유(アンニョンハセユ)
- 全羅道 안녕하셨지라(アンニョンハショッジラ)
- 慶尚道 안녕하십니꺼(アンニョンハシプニコ)
- 済州島 혼저옵서(ホンジョオプソ)
韓国の地域別の方言
2011年の夏、観客100万人を突破したアニメーション「마당을 나온 암탉(マダンル ナオン アムタッ:庭を出ためんどり)」が韓国のアニメーション史に大きな転機をもたらして話題となりました。
1日中、養鶏場で卵を産んでばかりのめんどり잎싹(イプサッ:葉っぱ)は、自分が産んだ卵を1度でいいから孵化させることが夢で、いつも庭から卵を孵化させているにわとりをうらやんでいましたが、ある日養鶏場の脱出に成功します。
庭を出ためんどりが、カワウソやマガモの助けを得て、マガモの卵を抱き、育てる中で繰り広げられる話なのですが、この映画に登場するカワウソの方言が、映画の面白さを一層引き立てています。
昔は地域色があらわになるという理由で、方言を使うことは恥ずかしいことだとされていたのですが、現代では方言の価値が再評価されています。
映画やドラマ・小説の中の人物が方言を使うと、観客や読者がその地域の情緒を生々しく感じとることができるからでしょうね。
「韓国語」というと標準語
日本語の標準語もそうですが、皆さんがイメージする「韓国語」というと、韓国語の標準語を指すことが多いです。韓国では1989年から「教養のある人が広く一般に使う現代のソウル言葉」が標準語として規定されました。
しかし言葉は時代によって変化するので、新しく使われる言葉や古語の中から、再び使われるようになった言葉を対象に審査をして標準語の資格を付与することもあります。
他の国では大抵、権威のある辞典にのっている語彙がその国の標準語彙として認定されるのに比べ、韓国は国家機関が標準語を定めるという点が特異ですね。
韓国の方言は大別すると、東南方言・西南方言・中部方言・済州方言・東北方言・西北方言の6つに分かれます。
慶尚南・北道の方言を「東南方言」、全羅南・北道の方言を「西南方言」といい、京畿道と江原道・忠清南・北道、そして北朝鮮の黄海道地域の大部分の方言をあわせて「中部方言」、済州島で使われる方言を「済州方言」といいます。
また北朝鮮地域で使われる方言は、それぞれ「東北方言」と「西北方言」に分かれます。
例えばソウル言葉で「이게 뭐니?(イゲ モニ?:これ何?)」という言葉を、それぞれの方言では下記のように言います。
- 東南方言(慶尚道地域)→「이기 뭐꼬?(イギ モッコ?)」
- 西南方言(全羅道地域)→「요것이 뭐당가?(ヨゴシ モダンガ?)」
- 済州方言(済州地域)→「이게 뭐깡?(イゲ モッカン?)」
- 東北方言(咸鏡道地域)→「이거이 무스겜둥?(イゴイ ムスゲムドゥン?)」
- 西北方言(平安道地域)→「이어이 뭐네?(イオイ モネ?)」
英語の“What is this?”と同じ意味のこれらの方言のうち、ソウル言葉である「이게 뭐니?」だけが標準語として認定されているのです。
標準語を使うと国民がより強く一体感を感じるようになるため、韓国は政策的に標準語の使用を奨励しています。また、テレビ・ラジオ・インターネットの影響力が強まるにつれ、人々の口調から地域方言の特徴を探しだすことが難しくなっているのが現実です。
方言の比較
【亡くなりました】
- 標準語: 돌아가셨습니다.(トラガショッスムニダ)
- 慶尚道: 운명했다 아임니꺼.(ウンミョンヘッタアイムニッコ)
- 全羅道: 죽어버렸어라.(チュゴボリョッソラ)
- 忠清道: 갔슈.(カッシュー)
【ちょっと失礼します】
- 標準語: 잠시 실례합니다.(チャムシシルレハムニダ)
- 慶尚道: 내좀 보이소.(ネチョムボイソ)
- 全羅道: 아따 잠깐만 보더라고.(アッタチャムカンマンボドラゴ)
- 忠清道: 좀 봐유.(チョムバユー)
【早く来てください】
- 標準語: 어서 오십시오.(オソオシプシオ)
- 慶尚道: 퍼뜩 오이소.(ポットゥッオイソ)
- 全羅道: 허벌라게 와버리랑께.(ホボルラゲワボリランッケ)
- 忠清道: 빨리 와유.(パリワユー)
【構いません】
- 標準語: 괜찮습니다.(ケンチャンスムニダ)
- 慶尚道: 아니라예.(アニラエー)
- 全羅道: 되써라(デソラ)
- 忠清道: 됐슈(デッシュー)
韓国人にも分からない済州島(チェジュ島)の方言
日本人が沖縄の方言を聞いてもその意味が全く分からないのと同じで、韓国の人たちも陸地から離れている済州島の方言は知らない人がほとんどです。韓国語とは思えないくらい不思議な言葉を使う済州島の方言をご紹介したいと思います。
方言の中でも一番有名な表現は「혼저 옵서예 (ホンジョオプソイェ)」。日本語に変えると“いらっしゃいませ”や“ようこそ”の意味を持つこの言葉は、標準語で言う「혼자 (ホンジャ) 오세요 (オセヨ) 一人で来てください」とかなり似ています。
ですが意味は全く違うところが面白いと話題となり、多くの方が済州島の方言といえば必ず最初に思い浮かべる言葉となったのです。
このように同じ意味でも全く違う発音をする言葉は他にもまだまだあります。
- 卵:독세기(ドックセギ) / 달걀(タルギャル)
- 髪の毛:허운데기(ホウンデギ) / 머리카락(モリカラク)
- 夫婦:두가시(ドゥガシ) / 부부(ブブ)
- 親戚:괸당(ゴェンダン) / 친척(チンチョク)
- 野菜:송키(ソンキ) / 채소(チェソ)
- じゃがいも:지실(ジシル) / 감자(カムジャ)
- おかず:촐래(チョルレ) / 반찬(バンチャン)
- 頭:대망생이(デマンセンイ) / 머리(モリ)
- 顔:놋(ノッ) / 얼굴(オルグル)
- 餌:것(ゴッ) / 먹이(モギ)
- 鈴:요령(ヨリョン) / 방울(バンウル)
- かご:구덕(グドック) / 바구니(バグニ)
- 部屋:구들(グドゥル) / 방(バン)
- 虹:상고지(サンゴジ) / 무지개(ムジゲ)
※日本語:済州島方言/標準語
韓国人にも分からない済州島の挨拶
안녕하우꽈(アンニョンハウクァ).
こんにちは。
잘 갑써양(チャルガプソヤン).
さようなら。
고맙쑤다(ゴマプスダ).
ありがとうございます。
잘 이십디강(チャルイシプディガン)?
お元気でしたか?
또시 꼭옵서양(トシコッゴプソヤン).
また来てください。
어디 감수광(オディガムスグァン).
どこへ行きますか?
잘 먹으쿠다(チャルモグクダ).
いただきます。
잘 먹었수다(チャルモゴッスダ).
ごちそうさまでした。
まとめ
今回は韓国の方言についてご紹介しました。地域によって特色のある方言があるのは韓国も日本も同じですね。
なかなか生の方言を聞くことはないと思いますが、ドラマではよく耳することでしょう。是非今回ご紹介した言葉が使われていないか、耳を澄まして聞いてみてくださいね。