食事の始めと終わりに、日本人であれば「いただきます」と「ごちそうさま」を言いますよね。これは日本でも韓国でも同じ文化です。
食物や作ってくれた人への感謝の気持を込めた挨拶は韓国でも欠かせません。挨拶を覚えて韓国の美味しい食事を楽しみましょう。
“いただきます”は韓国語で?食事マナーの文化的違いを解説
目次
「いただきます」の韓国語の基本的な表現
日本では食事をする前に「いただきます」、食事をした後に「ごちそうさま」と言うのが基本的なマナーです。
「いただきます」は、元来神様にお供えした食事を食べるときや、自分より位が上の人から食事を受け取るときに、それらを頭の上、頂き(いただき)に掲げたことから、食事の前に言うようになった言葉とされています。
現在では食材への感謝や、食事を作ってくれた人への感謝の気持ちを込めて使われることが多いでしょう。
「ごちそうさま」は、走り回って食事を用意する「馳走」が語源となり、食事を用意してくれた人に対して感謝する意味を込めて使われるようになりました。
韓国でも日本と同じように食事の前後にする挨拶があります。
基本的な表現とその発音
韓国における基本的な「いただきます」と「ごちそうさま」を学習します。
韓国語の「いただきます」
잘 먹겠습니다.
いただきます
チャルモッケッスムニダと読み、日本の「いただきます」と同じ意味で使われます。
【食堂で】
나:삼겹살 2인분이랑 이 된장찌개는 서비스.
サムギョプサル2人前と、この味噌チゲはサービスよ。
가:정말요? 감사합니다, 반갑습니다!
本当ですか?ありがとうございます、嬉しいです!
나:당연하지, 많이 먹어.
もちろんよ。たくさん食べなさい。
가:네, 잘 먹겠습니다!
はい、いただきます!
韓国語の「ごちそうさま」
잘 먹었습니다.
ごちそうさまでした
チャルモゴッスムニダと読み、日本の「ごちそうさま」と同じ意味で使われます。
【食卓で】
나:밤새 게임만 하지 말고 숙제도 해!내일 숙제는 끝났어?
一晩中ゲームばかりしないで宿題もしなさい!明日の宿題は終わったの?
가:이제 한다니까.
これからやるってば。
나:티비 보지말고 빨리 밥먹고 숙제해!
テレビ見ていないで早くご飯食べて宿題しなさい!
가:알겠어, 잘먹었습니다.
わかったよ。ごちそうさまでした。
韓国の食事の際の一般的な挨拶
「잘 먹겠습니다」や「잘 먹었습니다」以外にも、韓国では食事の際に交わされる挨拶がたくさんあります。使い方と合わせて学んでいきましょう。
잘 먹을게요.
いただきます
食事を始める前に使うフレーズで、直訳すると「良く食べます」という意味です。丁寧な表現で、本人の意思を含む表現です。
잘 먹을게.
いただきます
「잘 먹을게요」の短縮形で、親しい人や友人との間で使われるタメ口表現です。
식사 하셨어요?
食事されましたか?
相手に対してかなり丁寧に「食事をされましたか?」と尋ねる表現です。
밥 먹었어요?
ご飯食べましたか?
親しい相手に対して「ご飯を食べましたか?」と尋ねる表現です。
밥 먹었어?
ご飯食べた?
カジュアルな口語表現で「ご飯を食べた?」と尋ねる形です。SNSや対面で会ったときに「こんにちは」と挨拶するとの同じトーンで使われます。
意味は「ご飯を食べた?」と聞くのだけでなく、元気に過ごしているか確認する意図も含んでいます。返答する際には、考え込まずに軽く答えると自然です。
밥 먹었니?
ご飯食べた?
「밥 먹었어?」よりもさらにカジュアルな口語表現で、「ご飯を食べた?」と尋ねる形です。友人や親しい間柄で使われます。
これらの表現は、韓国語における食事に関連する一般的なフレーズです。相手との関係や状況に応じて適切な表現を使い分けることが重要です。
「いただきます」と韓国の食事の文化
日本と韓国は距離的に近く、言葉も似ている部分が多いので、文化もほとんど同じなのではないかと思ってしまいます。しかし大きく異なるか、もしくは正反対の文化もあるので、旅行に行く際には事前に確認しておくことが特に重要です。
「郷に入れば郷に従え」ということわざがあるように、日本では当たり前に思っているマナーでも、韓国でやってしまうと驚かれてマイナスイメージを持たれてしまう可能性があります。知識を蓄えておくようにしましょう。
韓国の食事マナーの日本との違い
【食器を持ち上げるのはNG】
日本では、口元と食器が遠い場合に、食事をこぼさないように食器を持ち上げて食べる事が多いです。しかし、韓国ではそれはNGマナーです。
その代わり、韓国ではスプーンを昔から常用するので、汁物を簡単に口に運ぶことができます。日本人にとっては、スプーンがあるだけでは汁物を飲むのに時間がかかってしまいそうですね。
【食事中の音】
日本では食事を静かに食べることが一般的で、大きな音を立てないようにします。一方で、韓国では食事中に話すことや食べ物・口の音を立てることは特に問題にされません。
むしろ音を立てている方が美味しいと表現していると判断されることもあるので、日本と大きな違いがあります。
【箸を机に直に置く】
日本の食卓では箸を手前に箸置きと一緒に置いたり、器の上に置いたりすることもあります(渡し箸といい、日本でもあまり良いマナーではありません)。しかし韓国では、箸は右側で机の上に直置きすることが一般的です。
衛生面から机の上に紙を置き、その上に箸を置く店も増えていますが、自宅だけでなく食堂でも昔から何の抵抗もなく机の上に箸を置くことが多いです。
【年上への敬意】
韓国では年上の人に対して敬意を払う文化があります。年上の人がいる場合、酒を注ぐ際には両手を使って注ぐことや、グラスが空になったらすぐに注ぎ足す、酒を飲むときには年上の人を向かずに横を向いて飲むなど、気配りをすることが一般的です。
【焼酎グラスを一気飲み】
日本でいうとっくりのように、韓国には焼酎グラスがあります。日本酒はちびちびと飲むという人も多いと思いますが、韓国ではこの焼酎グラスに焼酎を注がれたら、一気飲みをすることがほとんどです(韓国の方は一般的に日本人に比べてかなりお酒が強い印象があります)。
ですが自分のペースを守ることが大切です。無理な飲酒は体調を崩す原因になるので気を付けましょう。
【箸渡し・合わせ箸】
日本では箸から箸へ料理を渡すことが、マナー違反とされています。これは、火葬後の遺骨を箸から箸へ渡して拾い、骨壷に納めることから良くない行為とされているものです。
韓国ではエゴマの葉を漬けたものを取るときや、食べ物が取りづらく困っている相手に対してこの箸渡しをする場面をよく見ます。日本人には受け入れがたい作法かもしれません。
【座敷での座り方】
これは有名な食事の際のマナーですが、韓国では座敷に座るときにあぐらをかくか片足で立膝をつくことが一般的です。
韓国では罰を受けるときの姿勢が正座なので、食事中に正座をすることは絶対にありません。日本とは大きく違うマナーですので、実際に韓国でしている人を見て驚かないためにも、事前に知っておくと良いマナーです。
韓国の食事の際の感謝の表現
これまで紹介した表現以外に、ある特定の場面で食事について感謝の気持ちを伝える表現がありますので、例文と一緒に学習しましょう。
おいしかったです、ごちそうさまでした
맛있었어요. 잘 먹었습니다.
おいしかったです、ごちそうさまでした。
食事を終えた後に、食事を作ってくれた人や奢ってくれた人に対して感謝の気持ちを伝える表現です。ごちそうさまを伝えるだけよりも、感謝の気持ちがより伝わる表現でしょう。
【食堂で】
나:맛있었어요. 잘 먹었습니다.
おいしかったです、ごちそうさまでした。
가:저도 맛있게 먹어줘서 만든 보람이 있었어.
私も美味しく食べてもらえて作った甲斐があったよ。
나:저 김치는 이머가 담그시는 건가요?
あのキムチはお母さんが漬けているんですか。
가:그래 수제김치 또 먹으러 와.
そうよ、お手製のキムチ。また食べに来てちょうだいね。
ごちそうさまでした。さようなら
잘 먹었습니다. 안녕히 계세요.
ごちそうさまでした。さようなら。
食事を終えた後に感謝の意を表した後、別れ際に挨拶する表現です。食堂の会計後の挨拶として一般的に使われます。日本でも「ごちそうさまでした」と言って店を後にすることが多いですよね。
【食堂で】
나:맛있었어요?
美味しかったですか?
가:네, 특히 반찬인 제육볶음이 최고였어요.
はい、特におかずの豚肉炒めが最高でした。
나:저거 자랑하는 제육볶음이야.또 와줘.
あれは自慢の豚肉炒めなの。また来てちょうだいね。
가:잘 먹었습니다. 안녕히 계세요.
ごちそうさまでした。さようなら。
おごってくれてありがとうございました
밥 사줘서 감사합니다.
ご飯をおごってくれてありがとうございました。
他の人が自分に食事をおごってくれた場合に使う表現で感謝の意を示します。上司が食事を奢ってくれた場合には必ずこの挨拶を忘れずに言うようにしましょう。
【食事の後の帰り道に】
나:밥 사줘서 감사합니다.
ご飯をおごってくれてありがとうございました。
가:아니야, 아니야, 항상 열심히 해주니까. 앞으로도 잘 부탁해.
いやいや、いつも頑張ってくれているからね。これからもよろしくね。
나:저야말로 잘 부탁드립니다. 오후에도 열심히 하겠습니다.
こちらこそよろしくお願いします。午後も頑張ります。
가:이따 회의하는거 맞지?배불러서 졸릴 것 같아.
この後会議だよね?お腹いっぱいだから眠くなっちゃいそうだ。
食事を提供する側の韓国語表現
美味しく食べてくださいね
맛있게 드세요.
美味しく食べてくださいね
食べる相手に向けての心遣いを表す丁寧な言い回しです。
【食堂で】
나:김치찌개입니다. 맛있게 드세요.
キムチチゲです。美味しく食べてください。
가:네, 맛있게 먹겠습니다.김치 한 잔 더 주시겠어요?
はい、美味しくいただきます。キムチのおかわりをいただけますか。
나:김치는 셀프서비스로 저쪽에 준비되어 있습니다.
キムチはセルフサービスであちらに用意しています。
가:알겠습니다, 감사합니다.
わかりました、ありがとうございます。
美味しく食べてね
맛있게 먹어.
美味しく食べてね
友人や親しい間柄の相手に対して気軽な言い回しで伝える表現で、親しみを込めた言い方です。
【友達の家で】
나:오늘은 네가 가장 좋아하는 김치찌개를 만들었어. 맛있게 먹어.
今日は君の大好きなキムチチゲを作ったよ。美味しく食べてね。
가:반가워 고마워. 잘 먹겠습니다.
うれしい、ありがとう。いただきます。
나:다음에는 네가 내가 좋아하는 김치전을 만들어줘.
今度は君が私の好物のキムチチヂミを作ってよね。
가:알겠어 맡겨!
わかったよ、任せて!
たくさん食べてね
많이 먹어.
たくさん食べてね
特に若く食欲旺盛な相手に対して使う表現です。食堂や家庭など様々なシーンで使われます。
【食堂で】
나:오늘 오후에 작업이 많으니까 많이 먹어.
今日の午後はたくさん作業があるからたくさん食べて。
가:아, 그래요? 오늘 오후는 여유가 있을 줄 알았는데.
え、そうなんですか?今日の午後は余裕があると思ったのに。
나:우리에겐 쉴 틈이 없어.
私達には休む暇なんてないのよ。
가:알겠습니다…잘 먹겠습니다!
わかりました…いただきます!
まとめ
日本の「いただきます」も韓国の「잘 먹겠습니다」と同様に、食事の前に相手への敬意を表す言葉です。
食事を共にすることは韓国でも日本でも人との関係を築く大切な機会であり、心を込めて食事を楽しむことが重要視されます。両国ともに、食事を通じて人との絆を深め、感謝の気持ちを伝えることが文化的な重要性として根付いています。
食事の文化は地域によっても異なります。食事を共にすることが社交の場となり、ビジネスや交流の機会として重要な役割を果たすこともあれば、一方で食事は家族や友人との絆を深める大切な時間として捉えられ、家庭での食事が重視される場合もあります。
日本と韓国の食事文化における「いただきます」や「잘 먹겠습니다」は、共通の価値観である感謝の気持ちや敬意を表す重要な言葉です。異なる背景を持つ両国においても、食事の場を大切にし相手との心の交流を深めることが、より良い人間関係を築く上で大切な要素となります。
普段から「日本の食事シーンでのこういう場合、韓国ではどんな表現が使われるんだろう」と日常的に考える習慣をつけて、韓国でも食事の際の挨拶が自然にできるように練習しておきましょう。