ソルロンタンVSコムタン:韓国の伝統汁物の歴史と違いを知ろう!

  1. 韓国歴史・文化

韓方薬につきものの薬草であるカンゾウ(甘草)のように、韓国ドラマのあちこちに登場する食べ物がふたつあります。それは「ソルロンタン」と「コムタン」です。

ソルロンタンVSコムタン:韓国の伝統汁物の歴史と違いを知ろう!

ソルロンタンとコムタン

ソルロンタンは、生きていくことに疲れ、心にぽっかり穴があいてしまった人々の、お腹も心も満たしてくれる心強い食として登場します。

そしてコムタンは、体の具合が悪くて起き上がれない家族や恋人の気力を回復させてくれる愛の回復剤として登場します。

そのため、「元気をだして!ソルロンタン(心が疲れてつらい時に食べる料理)、「愛しているよ!コムタン」(体の具合が悪い時に食べる料理)と言われるほど。

ソルロンタンとコムタンは疲れた現代人にとって頼もしく、力になってくれる同伴者なのです。

違いは何?

ソルロンタンとコムタンは、いずれも牛骨と牛足を弱火で10時間程度じっくり煮込んだスープでつくるという点は似ています。

そこに違いがあるとすれば、ソルロンタンには胸部の肉と骨、素麺が入っている点です。

それで、이왕이면 다홍치마(どうせ似たようなものなら良いものがいい)と、具がたっぷり入っているソルロンタンがコムタンに比べて人気があります。

ソルロンタン名前の由来

韓国産牛肉のスープにご飯と野菜を添えたボウル。

では、外国人に人気がある韓国料理ベスト10に新しく入ったソルロンタンについて、もう少し掘り下げてみましょうか?

まずはソルロンタンの名前の由来ですが、色々な「説」があるそうです。

お祭り起源説

一番目は先農祭(ソンノンジェ)と呼ばれる豊作を祈るお祭り起源説です。

朝鮮時代の王様が、先農壇(ソンノンダン)という祭壇で豊作の年になることを祈った後、牛を肉や骨つきのまま煮込んで食べた先農湯(ソンノンタン)という料理が起源だという説が代表的です。

ソンノンタンの発音が徐々に変化してソルロンタンになったというわけです。

設農湯説

また別の説は、設農湯説です。

世宗大王が「親耕(チンギョン)」と呼ばれる、民に農業の重要性を認識させ、農業を広めるための儀式を行った際、雨がたくさん降って動けなくなります。

おなかもすいたことから、農業用の牛をほふって煮込んで食べたのですが、ここから始まって設農湯(発音はソルロンタン)と呼ばれるようになったという説もあります。

雪濃湯起源説

そして、雪濃湯(ソルロンタン)起源説です。

ソルロンタンが雪のように白く、スープが濃いことから、雪濃湯と表記されることもありました。

モンゴル起源説

モンゴル起源説もあります。

モンゴル語から「ソルロン」の語源を見つけたという説もあります。高麗時代、モンゴルから牛をお湯で煮るという調理法が入ってきて、ソルロンタンになったのだという説です。

モンゴルの軍人たちが戦争中、簡単につくって食べていたお肉をゆでた後のスープである「コンタン」をモンゴル語で「シュル」と発音しますが、これが伝わっていくうちにソルロンタンになったという説もあります。

ソルロンタンの歴史

戦後に大衆化

茶色と白の牛のソルロンタンが野原に立っています。

ソルロンタンの正確な起源はわかりませんが、日本の植民地時代になった後で、ソルロンタンは今日のハンバーガーやチャジャンミョンのように早く手軽に食べられる食べ物として大衆化しました。

戦争物資の普及のために朝鮮総督府の主導によって食用牛肉の生産政策が始まり、肉牛が大量に生産されるようになると、京城にも精肉店がぐんと増えました。

精肉店で牛肉を売り、残った骨や副産物でつくった食べ物を売り始めたのです。

人気の秘密

当時、こってりした濁ったスープに、しょうゆの代わりに塩で味付けをし、ネギと唐辛子の粉を薬味としてのせ、ご飯をいれて食べるソルロンタンは、値段の安い、品位に欠ける食べ物として冷遇されていたこともありました。

しかし、ソルロンタンの安価で、スピーディーな調理時間、中毒性のある味と三拍子そろっている点が庶民の心をとらえ、1930年代からソルロンタンを扱う店が爆発的に増えました。

そのため、これまで体面を重んじてソルロンタンの店に足を運ぶことをためらっていた両班(ヤンバンと呼ばれる貴族階級)、モダンボーイ、モダンガール、

はたまた朝鮮にいた日本人までもが出前をとって、家でソルロンタンを食べ始め、通りは「ソルロンタン出前人」たちであふれるようになりました。

お店は24時間営業

ソルロンタンの店は通常24時間営業のところが多くあります。

その理由はスープをとり続けなければならないことと、火が消えるとスープを最初からとりなおしになるので、いずれにせよ24時間見守らなければいけないからだろうと思われます。

安くて、早くて、おいしくて、いつでも食べられるソルロンタンがあるから。

生きることに疲れ、心にぽっかり穴があいてしまった現代人が24時間温かい愛を充電することができる料理、それが「ソルロンタン」なのです。

ソルロンタン一杯いかが?

지우: 민우야, 요즘 힘이 없어 보이네.

ミヌ、最近元気なさそうに見えるね。

민우: 그러게. 일때문에 많이 힘들었나봐. 

うん。仕事のことですごく疲れたみたいだ。

지우: 나도 요즘 입맛이 없는데 곰탕이라도 먹으러 갈래?

私も最近食欲ないんだけど、コムタンでも食べに行く?

민우: 그러자. 힘이 없는 난 설렁탕, 입맛이 없는 넌 곰탕이 좋겠다. 

そうしよう。元気のない僕はソルロンタン。食欲のない君はコムタンがいいね。

韓国の汁物の名前の違い

違う国の言葉を覚える時、簡単に思えて意外と知らなかったりするのが食べ物や料理の名前のような気がします。

見たことも食べたこともないものの名前を覚えるのはなかなか大変ですよね。

有名な韓国料理

最近は日本にも、韓国料理店がたくさんできています。

名前なら聞いたことがある料理や実際よく食べている料理が、みなさん一つや二つはあるのではないでしょうか。

チゲ

特に韓国料理で有名なのが찌개(チゲ)ですね!

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キムチチゲ

순두부찌개(スンドゥブチゲ)や김치찌개(キムチチゲ)は、今となっては韓国料理店ならどこにでもあるくらいよく食べられています。

もちろん韓国人も大好きで、家庭でも外食でも食べる人が沢山います。

サムゲタン

そして、もう一つ有名な삼계탕(サムゲタン)も欠かせないですね!

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サムゲタン

スタミナがついて夏バテに効果があるので、真夏になると必ず一回は食べると言っていいほど韓国人が好きな料理です。

でもよ~く見ると、同じ汁物の料理なのに찌개(チゲ)と(湯・タン)で名前がそれぞれ異なります。

これ以外にも(クッ)、전골(チョンゴル)などいろいろとあります。

この4つはどんな違いがあるのでしょうか。

汁物の名前の違い

これは大きく2つに分かれます。

1.汁が主役(クッ)と(湯・タン)

2.具材が主役찌개(チゲ)と전골(チョンゴル)

クッとタン

まず、クッとタンはほぼ同じだと言えます。ただ、クッは韓国語固有の言葉で、タンはそれを漢字で書いてもう少し上品な料理を示していたのです。

たとえば、王様が食べるクッをタンと言う、といったような感じです。ちなみに、クッで一番知られているのがわかめスープの미역국(ミヨックッ)になります。

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ミヨックッ

韓国のお母さんたちが出産後に必ずこれを食べるので、韓国人にとっては欠かせない汁物だと思います。

チゲとジョンゴル

次はチゲとジョンゴルです。

簡単に分けると、食堂などで注文した時、チゲは料理が完成された状態で出てきて、ジョンゴルは具材などに完全に火が通ってない状態で出てきます。とても簡単ですよね?

もう少し細かく説明をすると、料理の中でメインとなる具材が、チゲの方が多く入っていて、ジョンゴルはどちらかというと他の具材の方がたくさんはいっています。

たとえば、낙지전골(ナクチジョンゴル)には、メインである낙지(ナクチ:テナガダコ)よりも合わせて入っている野菜の方が多めに入っています。

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ナクチジョンゴル

韓国で味わいたいのは汁物! 

このように、韓国には同じスープに具材が入ってる料理でもたくさんの名前があります。

日本の食卓に味噌汁が必ずあるのと同じで、韓国の食卓にも必ずクッなどが一つは上がっています。

時にはチゲとクッが二つとも上がる時があるくらい、汁物が大好きな韓国ならではの食文化だと思います。

まだまだ日本に紹介されていない汁物の料理も韓国にはたくさんあります。もしこれから旅行などで韓国に行かれた際には、新しい汁物の料理を探してみるのもいいですね。

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