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ビジネスを成功に導くには、業務遂行能力と言語技術は必要不可欠です。しかし韓国では、他にも決して外してはいけないポイントがあります。
例えば「長幼の序」と呼ばれる年長者を重んじる態度など。そのような韓国での独特なマナーをご紹介しましょう。
韓国ビジネス成功のカギ「よろしくお願いします」から学ぶ韓国語マナー
独特なマナー「長幼の序」とは?
聞きなれない「長幼の序」というものについて、少しご説明しておきましょう。簡単にまとめますと、家族や社会における階層や関係性を重視する考え方で、年齢や地位に応じた尊敬と責任を示すことをいいます。
これまでにも既にご紹介していることですが、韓国では家族を含む人との関係性の中で「年齢」が非常に重要なポイントとなっています。それは使う言葉、つまり「敬語」を使うかどうかの判断基準になっています。
日本と大きく違うのが、親に対して敬語を使うということですね。そして言葉だけでなく、親や年上の兄弟姉妹に対して敬意を払い、その意見や決定に従うことが一般的です。年齢が上の人々の経験と知識を尊重する文化が根付いています。
そして同じことが職場や学校などの社会においてもいえます。つまり、年齢や肩書を目安とした上下関係を非常に重視する社会です。
年齢や地位の高い人に対しては尊敬を示し、彼らの意見や指示に従うことが尊重され、相互の信頼や調和を重んじる文化だといえるでしょう。
西洋文化が水平的だとすれば、東洋は垂直的な関係。日本にもこのような縦の関係を重んじる部分はありますが、日本のそれよりももっと厳格だといえます。
【ビジネスでも長幼の序を重んじる】
例えば、西洋人の若者と韓国人の年配者が事業の話をするとしましょう。
西洋人はビジネスのことだけを考えて話しますが、その態度が年長者に接する態度ではない場合、西洋人にとっては当然のことであっても、韓国人は非常に不快になることがあります。
公私は分けて考えなければいけないということをよくよく分かっていながらも、気分を害した状態で商談をすることになるわけです。ですから、ビジネスにおいても相手の年齢を見て行動しなければいけませんね。
逆にビジネスのことだけを考えて話すよりは、長幼の序を重んじる態度で話を展開していくと、より効果的であり、気分のよい結果を得ることができます 。
【トップの権力が非常に強い】
また会社や組織において、社長や会長のようなトップの意見・権力や権限が非常に強いという特徴があります。
トップが交代すると様々なルールや仕事の進め方・方向性が変わってしまったり、「トップダウン」と呼ばれるトップの一声で会社や組織の中でスピーディーに何か物事が決まるという事もよくあることです。
一方で、近年では西洋文化の影響もあり、個々の考えや意見が重視される傾向も見られます。しかし依然として「長幼の序」の概念は韓国社会において重要視され、家族や社会における人間関係の枠組みを形成しています。
韓国ビジネスマナーの基本
前項で述べた「長幼の序」は言葉遣いだけではありません。「長幼の序」がベースとなった韓国独特のビジネスマナーがありますのでご紹介しましょう。知っているのと知らないのとでは、印象が大きく違いますので、しっかり確認しておきましょう。
基本のマナー
- 物は両手で渡す
- 挨拶は握手よりもお辞儀で
- 年長者より先に席につかない
- 会食の時は、上司や年長者が最初に食事を開始するのを待つ
- 食事は茶碗をテーブルから持ち上げず、必ず置いたまま食べる(ご飯やスープを食べる際はスプーンを使用)
- 相手が少し時間に遅れても、不快なそぶりを見せない
- ガムをかむのは厳禁
- 鼻をかみたくても、たとえズルズルしたとしても、人前で鼻をかんではいけない(韓国では、食事中に鼻をかむこともとても失礼なこと)
- 相手の注意を引く時、腕をたたいたりしないこと
- 年配者にはこっちに来いという意味での手招きはしてはいけない
- 年長者の前では足を組んで座らないこと
- 話し中、相手に手のひらを見せてはいけない
- 相手が目を見ていなくても、話を聞いていないのではないかと心配して注意を引く必要はない(目をじっと見続けながら話すと礼儀を欠くことになる)
- 相手の役職をよく確認し、相手を呼ぶ際は必ず敬称を付ける
【2の補足】
挨拶は握手よりもお辞儀が良いのですが、握手をする場合もあります。握手をする時は、自分から手を差し出すのではなく、目上の人が手を差し出すまで待ちます。
そして相手が女性の場合もそうなのですが、先に手を出すと嫌がられます。握手は右手で行い、左手を右手の肘に軽く添えましょう。
【4の補足】
会食の席にも意味があります。座席の上座下座のマナーは日本と同じで、一番奥の席が上座、入り口に近い方が下座になります。席につく時も気をつけましょう。
役職が重要な韓国
ビジネスにおいて役職が重要なポイントとなる韓国。会社や職場では、相手の肩書や職種を呼称に入れるのが基本です。日本でも「○○課長」といった呼び方をしますが、韓国では少し違います。日本人にとっては少し変な感じがするかもしれませんが、
肩書や職種+님
直訳しますと「○○課長様」といった呼び方になります。韓国では肩書や職種を重要視するので、ビジネスやかしこまった場で自己紹介する際には自分の肩書をいれて自分の名前を言いますので覚えておくと良いですね。
저는 이 하나 팀장입니다.
私はイハナチーム長です。
これも日本人にとっては少し違和感がありますね。流石に自分には「님」を使いませんが、役職はしっかりと入れて自己紹介します。また、日本と違い役職は名前の後に来るのも特徴的ですね。
そしてもう一つ、日本語と韓国語とで大きく違うことがあります。それは自分の会社の上司について他の会社の人に話す場合で、注意が必要です。
日本では話す相手が社外の人の場合、自分の会社の人つまり身内について尊敬語を使いませんし、呼び捨てにします。韓国ではたとえ自身の会社の上司について話す場合でも、必ず尊敬語を使いますので気を付けましょう。
정 부장님께서 잠깐 자리를 비우셨는데요.
ジョン部長は、少し席を外しておりますが。
이 사장님께서 그렇게 말씀하셨습니다.
イ社長が申しておりました。
ちなみに以下が会社で使われる主な肩書です。
- 회장님 会長
- 사장님 社長
- 이사님 理事
- 전무님 専務
- 소장님 所長
- 부장님 部長
- 차장님 次長
- 과장님 課長
- 팀장님 チーム長
- 대리님 代理
ビジネスシーンで使える簡単な韓国語の挨拶
韓国語が話せなくても、簡単な挨拶を韓国語で出来ると相手に与える印象が良いですね。基本的な挨拶や自己紹介で使える簡単なフレーズをご紹介しましょう。
처음 뵙겠습니다.
はじめまして(直訳すると、初めてお目にかかります)
~라고 합니다.
~と申します。(~には名前を入れましょう)
뵙게 되 반갑습니다.
お会いできて嬉しいです。
감사합니다.
ありがとうございます。
저 역시 감사합니다.
こちらこそありがとうございます。
시간 내 주셔서 감사합니다.
時間をつくってくださって、ありがとうございます。
잘 부탁드리겠습니다.
よろしくお願いします。
다시 연락 드리겠습니다.
また連絡します。
안녕히 계십시오.
さようなら。(自分が去るとき)
안녕히 가십시오.
さようなら。(相手が去るとき)
「よろしくお願いします」の韓国語表現
頼み事や挨拶をするとき「よろしくお願いします」と言いますね。韓国語の「よろしくお願いします」の言い方は複数ありますが、礼儀を重んじる韓国では場面や相手による使い分けが大切です。
そこで「よろしくお願いします」の韓国語表現をしっかりと学習しておきましょう。韓国語で一般的に「よろしくお願いします」と言いたい場合は「잘 부탁합니다」を用います。
「잘」は「よく」という意味の副詞です。「부탁합니다」は動詞「부탁하다」(頼む、託する)の語幹に、かしこまった場で使う丁寧な表現「~(스)ㅂ니다」(~です、~ます)が付いた形です。「부탁」は漢字で「付託」と書きます。
안녕하세요? 일본 도쿄에서 온 타쿠야입니다. 잘 부탁합니다.
こんにちは。日本の東京から来たタクヤです。よろしくお願いします。
もう少し親しみを込めて「よろしくお願いします」と言いたい場合、「잘 부탁해요」を使います。「부탁해요」は動詞「부탁하다」(頼む、託する)の語幹に、日常会話で使う丁寧な表現「~아/어/여요」(~です、~ます)が付いた形です。
우리 아들 잘 부탁해요.
うちの息子をよろしくお願いします。
目上の人にもっと敬意を込めて「よろしくお願いいたします」と伝えたい場合は「잘 부탁드립니다」か「잘 부탁드려요」を使います。
「잘 부탁합니다」「잘 부탁해요」(よろしくお願いします)に、「申し上げる」や「差し上げる」を意味する動詞「드리다」が合わさった形です。使い方は以下のような感じになります。
A:오늘도 잘 부탁드립니다.
本日もよろしくお願いいたします。
B:저야말로 잘 부탁드려요.
こちらこそよろしくお願いいたします。
ビジネスシーンで、さらに丁寧に「よろしくお願い申し上げます」と表現したい際には「잘 부탁드리겠습니다」を使用します。「잘 부탁드립니다」(よろしくお願いいたします)に、婉曲の表現「겠」を加えた形です。
以下の例文は失礼がないビジネスで使える挨拶ですので、是非覚えておきましょう!
처음 뵙겠습니다. 저는 안동원이라고 합니다. 앞으로 잘 부탁드리겠습니다.
初めてお目にかかります。私はアン・ドンウォンと申します。これからよろしくお願い申し上げます。
韓国語のビジネスメールについて
日本語でビジネスメールを書く時、最初はその独特な言い回しにあたふたしますよね。韓国語のビジネスメールにもよく使うフレーズや言い回しがあります。この言い回しや表現を知っていると韓国語がよくわかる(上級者だな)と思われるかも、ですよ。
日本ではまずは「お世話になります」「お世話になっております」で始めますよね。この挨拶ですが、韓国語では「안녕하세요」で問題ありません。
日本のビジネスメールでは、相手の会社名・所属・相手の名前までをタイトルのように描きますが、韓国ではそこまで厳密に会社名・所属・相手の名前を書かなければいけないというルールはありません。
ただ役職を重んじる文化ですから、相手の名前の後に役職名を入れることを忘れずに。そのあとに自分の名前を伝えます(役職があれば自分の名前の後につけます)。メールのはじめに自分の名前をしっかり名乗ることが大切とされていますので、注意しましょう。
ビジネスメールでよく使われる言い回し
これを知っているとビジネスメールの書き方を知っているんだなと思われるような便利なフレーズ、表現をご紹介しましょう。
시간을 내주셔서 감사합니다.
お時間を頂きありがとうございました。
〇〇건으로 연락을 드립니다.
〇〇の件でご連絡差し上げました。
메일 잘 받았습니다.
メール受け取りました。
빠른 회신 감사합니다.
迅速なご返信ありがとうございます。
연락 주셔서 감사합니다.
ご連絡いただき、ありがとうございました。
~에 대하여 /~에 관하여
~に関しまして
확인 해주시기 바랍니다.
ご確認ください。
검토 해주시기 바랍니다.
ご検討ください。
수고스럽습니다만
お手数ですが
첨부 파일로 보냅니다.
添付ファイルにて送ります。
바쁘신 와중에 죄송합니다만
ご多忙のところ恐れ入りますが
~해 주시면 감사하겠습니다.
~して頂ければ幸いです。
문의사항 있으시면 언제든지 연락주십시오.
質問があればいつでもご連絡ください。
오늘도 좋은 하루 되세요.
今日も良い1日をお過ごしください。
감사합니다.
よろしくお願いします。
日本語では「何卒よろしくお願いいたします。」とメールを終えることが多いですが、韓国語では「감사합니다.」となります。
そして韓国ではメールの最後に、上の人に差し上げるという意味で自分の名前に「오림」「드림」「배상」といった語を添えたりもします。
いずれも手紙の結び言葉として使われますが、ビジネスメールでも丁寧な表現として使われますので、使ってみても良いですね。ちなみに「오림」「드림」ともに丁寧な表現ですが、「오림」の方がより丁寧な表現とされていますよ。
まとめ
今回は韓国のビジネス文化やマナー、ビジネスでよく使われる「よろしくお願いします」の使い方などをご紹介しました。今回ご紹介した表現やマナーを使えば、失礼なく、そして相手に良い印象を与えること間違いなし!是非練習して試してみてくださいね。